top of page

3年たつと石巻もどこも関係ない

 

阿部:2月からプロジェクトがスタートして、イベントやホームページのアンケートでママたちの声を集めましたが、どんな印象をもたれましたか?

 

荒木:私たちは3.11当時も子そだてをしていて、当時は本当に苦労したという経験をしています。でも、今ベビースマイルに集まるママたちと話してみると、「当時は結婚や妊娠をしてなかったから地震のときにどう子どもを守ったらいいかわからない」という声を多く聞くんです。そういう意味では、石巻も他の地域も関係なくなってきていますね。だから、すべてのママたちのために私たちの経験を伝えていかなければと思いました。

 

齋藤:先日3年目の3.11を迎えて、あの時のことを思い出したときに沢山の方が亡くなられたんだという哀しみがまた込み上げてきました。でも、はっと気がついたんです。津波への恐怖って薄れてしまっているなあって。今まで津波の映像を見ること自体が興味本位で見ているような罪悪感があって控えてきたんですけど、3年の節目に忘れないようにとYou Tubeにアップされた映像を見たんです。そしたら「あっ、津波ってこんなにおっかないものだったんだ!」と痛烈に思い出して、これは子どもに伝えていかないとダメだと。

 

川村:そうだね。津波にもまれながら必死で逃げて助かったのに気がついたら背中にいたはずの赤ちゃんがいなかったという人もいる。おんぶ紐ひとつとっても作るなら子どもが抜けてしまわないもの。体にくくりつけるぐらいのものでないとね。

 

荒木:手をつないでいたのに離れてしまったりしたら、その先どうやって生きていけばいいのか…どんな気持ちがしたんだか想像すると…本人は悪くないのにね。

 

阿部:3年経ったからこそ、危機感も伝えていかなければと考えているんですね。​

 

家族各自がそれぞれの場所で生き延びよう

 

阿部:アンケートの回答だと石巻のママ、都心のママどちらにも共通して見られた心配事はダントツで「子どもと離れているときに地震がおきたらどうしよう」ということでした。ここから見えてくることって何でしょう?

 

川村:うちの子は今年から幼稚園に入るんだけど、いままで実家に預けるような時以外は片時も離れたことがないんです。でも、これからは一日に数時間だけど離れるようになる。もちろん園の対応を信じるけど、地震のときどうしたらいいのかも教えないといけないですね。津波って恐いんだよ、高いところへ逃げなくちゃだめだよって。

 

荒木:家族が離れている時間は当然あるわけで、それぞれがそれぞれの場所で生き延びなければならないなと思う。家族での話し合いはもちろんしてあって、ここに待機してねとか、集合する場合はここねとか決めてはいるんだけど、口約束だと本当にそのとおり行動してくれるかが不安ですね。連絡先や約束を書いたカードは、家族全員がおんなじものをそれぞれ持っておく必要があるのかも。

 

川村:家族みんなの約束事を書くカードね。それぞれに持つ感じだよね。大人なら財布に入れるぐらいのサイズがいいね。

 

豊宮:連絡先が書いてあるお守りみたいなキーホルダーとかグッズとしていいんじゃない?でも幼稚園でダメって言われるかな?園で1個までって言われたな〜

 

荒木:園によって違うよね〜。(一同笑)​

 

地域によるライフスタイルのちがい

 

阿部:主にママたちが使う防災グッズということで考えると、

 

●両手が使えること

●軽量でコンパクトなこと

●衛生的であること

●いろいろな使い方ができること

●おしゃれで普段づかいできること

 

あたりがポイントになってくるかと思いますが、これについてはいかがですか?

 

豊宮:軽量だったりコンパクトなことが、東京のママたちには重要なのか〜。

 

川村:私たちは足がクルマなので、スーパーにあるようなカゴにいっぱい荷物を詰めて両手に持ってどんっと乗せて移動したりするんです(笑)。だから軽量、コンパクトってことはあまり考えなくなってるけど、都会のママたちも使うとしたらベビーカー移動だからやっぱり小さいほうがいいってことですよね。

 

豊宮:それにあの時寒かったからどうしても防寒のこととか、津波のことに考えが寄っちゃうな〜。

 

川村:いちばん欲しかったのはおんぶ紐だけど、介護とかで使う大人用のを使えばいいわけですよね。アンケートでは防災ずきんが欲しいという意見も多かったけど、これって家にあったら被せるかな?

 

豊宮:石巻の場合は、上から落ちてくるものより水から逃げるってことだったからね。

日赤に勤めてた友だちに「当時どういう患者さんが来たの?」って聞いたら、落下物で怪我をした人はほとんどいなかったって。低体温の人がばかりだから、体を温めればいいという感じだったと。でも都会だと色々落ちてくる可能性は高いですよね。ビルの窓とかね。

 

川村:地域によって防がなくちゃいけないものは違ってくるかもね。

兄弟みんなを守れるかどうか

 

川村:たとえば、薄くて軽い防災ずきんを作ったとして、子どもは一人じゃないですよね。そうすると子どもの数だけいつも持つのは難しいですよね。

 

豊宮:どっちかだけなんて選べないよね。緊急で避難するときに子どもが二人いたら3、4歳になってもまだ走るのが遅いから、おんぶに抱っこで親が二人担いだほうが早い。そうなると荷物は重くて持てないから、もういいや、とにかく命だけ持って逃げようって感じになりますよ。

 

阿部:そうなると以前からベビスマさんでアイデアが出ていた「オムツポーチにもなる防災ずきん」はママバッグに複数入れられますね。

 

豊宮:オムツポーチならオムツの期間だけでなく長く使えるしね。

 

川村:私はバッグの中がポーチだらけだから、ポーチだとうれしいかな。いざという時、中味出してっていうことだよね。バッグの中にお菓子かすが〜!って時あるけどね(笑)

 

阿部:これは膝当てなんですが、こういう衝撃吸収性のある素材なら薄くておしゃれな防災ずきんが可能かと考えているんです。

 

荒木:ああ、ウエットスーツの生地で作るのはいいかも!石巻って実はウエットスーツ製造が盛んな土地らしいんです。この素材を使って、震災後バッグとかを作っているメーカーもあるようです。

 

豊宮:それは雇用になるよね!

あれ、どうしたの?

(子どもたちを見ると頭に椅子を乗せている)

 

川村:防災グッズなんじゃない(爆笑)

ヘルメットにもなる椅子だよ〜(一同大笑い)

オムツは備蓄、ミルクはどうする?

 

齋藤:当時何が欲しかったか思い出すと「結局オムツ」と思う。3日経てば近くの店も開けてくれるし、救援物資とかどんどん来るんだけど、いきなり買えない状況になったもんだから、また急にオムツがなくなるんじゃないかと不安で、もうパンツタイプになっているのにテープタイプまで買ってしまったり。不安だったな〜。結局使わないまま誰かにあげてしまったりしたけどね。

 

阿部:オムツについては、アンケートでもフリーサイズのがあったらいいと回答はたくさんありましたが備蓄で備えられるんですね。実はフリーサイズの布オムツカバーというのがあって、これを使うとカバーの中はサイズが合わないオムツやペットシーツ、生理用品などでもいいんです。

 

一同:なるほど〜。紙オムツばっかり使っているから気づかなかった。

 

阿部:防災ガイドで紹介しましょう。

 

川村:救援物資が届くまでに必要なものがいいですよね。

 

荒木:そうなるとミルクだよね。避難所でお母さんのおっぱいが出なくなって泣いてたら、周りの目もあるし、お腹を満たしてあげるものがほしいよね。豊宮:避難所でミルクってどうしてたんだろう?お湯なかったっていうよね。

 

川村:水をそのまま使ってたっていうのは聞いたことある。使い捨て哺乳瓶ってあるのかな?

 

荒木:あるある。折り畳める使い捨ての哺乳瓶があるよ。

 

阿部:お湯も沸かせる防災用のミルクセットもあるにはあるんですが、1回使い切りで6000円もするので買うのを躊躇しちゃいますよね。

 

川村:完全母乳の人の中には母乳が一時的に出なくなる人もいるよね。

 

荒木:ミルクがない人やミルクを飲まない子には母乳が完全に止まってしまわないように吸わせ続けた方がいいんだよね。それとともに安心して授乳できる環境を防災計画にもりこんだりしてほしいね。

 

豊宮:糖水でもいいのかな?産婦人科では飲ませてたけど。豊宮:こういう地震を経験して、その後避難所ではオムツとかミルクとか備蓄するようになったのかな?

 

荒木:いや〜どうだろうね。

 

「一時しのぎの糖水」助産師さんに聞いてみました。

上記のママ達の疑問を受け、日本助産師会に問い合わせました。「コップ1杯の湯冷ましに砂糖大さじ1杯を溶かすことでミルクが足りないときの一時しのぎになる」とお答えいただきました。乳幼児を抱えたママ向けの「震災時の子育て知恵」が掲載されたホームページも紹介いただきました。ぜひ、参考にしてください。

 

「日本未熟児新生児学会」災害時の子育て情報

中学生の碑文に学ぶもの

 

齋藤:最初にも話しましたが、私は実家が女川で、あそこは壊滅的な被害を受けた地域だというのに自分の恐怖感が薄れていることにはショックだったんです。先日女川の中学生が浜に石碑を建てた特集をテレビで目にしたんですが、その石碑の内容がすごいんです。

「ここまで津波が来ました。ぜったいにこの上まで逃げてください。逃げない人がいたらどんなことをしてでも、この上までひっぱり上げてください。この碑はぜったいに壊さないでください」って1000年後の人へ向けて書かれてるの。

今まで石碑って慰霊の意味で建てるものだって思っていたけど、この中学生の石碑は1000年先の人たちまでの明確なメッセージなんですよね。中学生なのに大人よりも先のことを見据えて考えていて、感じていることが深いんだなと思いました。だから私たちも、ただ使いやすいものを作るんじゃなく、ちゃんと子どもたちに伝えられるものを考えないとなと思んです。

 

阿部:メッセージということでは、絵本などもありうるかもしれませんね。これは精神科医が監修して作られた本なんですが、子供ってママが精神的な病になると自分のせいなんだと自分を責めることが多いらしいんですね。

 

一同:「へえ〜!」

 

阿部:「ママ、僕のせい?」って子どもが思ってしまった時に「そうじゃないんだよ、病気なんだよ」と教えてあげるための本なんですね。そういう感じで、火事や津波のときに逃げる時の行動やなぜ待機が必要なのかとかを絵本で教えてあげるのもいいですね。

 

川村:そういう本は他にもあるかもしれないけど、うちらなりのメッセージの伝え方はできそうだね。

 

荒木:そういえば、これは防災協会の方が持ってきてくれたんですけど、読み聞かせをして減災や防災の教室を開いているらしいんです。でも内容的に小学校ぐらいが対象なのかなと感じて、ベビスマに集まる子たちにはまだ早いかなという気がして立ち消えになったんですが、それをもっと2、3歳の子でも理解できるものにするといいと思うな。

 

阿部:たしかに内容は詳しくて素晴らしいけど、小学校に上がらないと難しいかもしれませんね。

 

荒木:2、3歳なら仕掛け絵本にするとかね。

 

 

いのちの石碑プロジェクト

日本大震災の津波によって大きな被害を受けた宮城県女川町の中学生たちが、自分たちの手で「1000年先まで記録を残す」ため、町内にある全ての浜に石碑を作ろう取り組んでいる活動です。

 

「いのちの石碑プロジェクト」

母から子へ、子から母へのメッセージを

 

阿部:アンケートの中では「声でアドバイスしてくれるお守りのようなもの」というのも面白いなと思いました。

 

荒木:ボイスキーホルダーとか。メッセージを入れておくキーホルダーみたいなのはいいですよね。

 

阿部:ママの声をきくと絶対安心しますよね。たとえばこのプロジェクトでは防災ガイドも作ろうとしているので、その情報とあわせた「キッズ防災手帳」という形にして、声を録音しておく機能をつけてはどうかと思います。

 

川村:自分も子どもたちの声を録音して持っていたいな。励まされる。

 

豊宮:幼稚園行き出したあたりの声がいい。でも、普段も聞いちゃったら子離れを妨げるかな〜。

 

荒木:手帳なら住所録は水に濡れても消えないものがいいかもね。

 

阿部:自衛隊も使用している、水に強い紙があるらしいです。

 

荒木:ストーンペーパーじゃないですか?以前聞いたことがあります。

 

川村:手帳にしても音声機能がつくと園としてはどうなんだろ?「他の子も持ってきたくなるので」と断られたりするかも。

 

豊宮:じゃあ、キャラ弁禁止もしてほしいな〜(笑)。

 

川村:保育商品を扱っている業者さんに売り込んで入園グッズのひとつにできないかな。そうすると、そんな問題もおこらないよね。

 

阿部:それ、石巻市に提案しましょうか?

 

全員:あ〜いいねえ。

 

 

川村:防犯ブザーみたいなキーホルダーも捨てがたい。防犯ブザーは助けを求めるタイプだけどね。

 

豊宮:防犯ブザー兼、防災ブザーだったりして(笑)

 

荒木:「後ろ見ないで走りなさいー!」とか言うの。

 

齋藤:いいんじゃない!

 

荒木:「ほら、よそ見しないでー!」

 

阿部:それ、誘拐犯とか逃げて行きそう。

 

齋藤:「うちの子になんかしたら許さないからねー!」

 

川村:「身代金用意できないからあきらめて!」(一同大笑い)

 

阿部:いくつか良い案が出てきました。ここから採算性や製造環境を考慮して、商品化の見込みがありそうなものを絞り込んでいきますね。次は候補の商品をサンプル化して、それを囲んでお話ししたいですね。

 

bottom of page